かつては認知科学・心理学の方法に準拠した量的手法が中心だった第二言語習得(SLA)の研究は、近年「社会派」に転じたと言われる(Block, 2003)。最近では、言語習得の当事者の内面や、習得が起こる(あるいは起こらない)直接・間接の状況・環境・来歴・政治的力関係等に目を向けた学際的研究に大きな関心が集まっている。それと同時に、一般化を求める量的研究とは目的・方法・思想が異なる質的研究が盛んに行われるようになってきた。また量的・質的両方のアプローチを用いた混合手法の研究への注目度も高まってきている。
この講演では、主として日本で英語教育に携わる方々を対象に、このような言語習得・言語使用の質的研究について、特によく用いられ応用範囲の広い手法であるインタビューを中心に、実際の研究を例に具体的に論じる。
[講演のアウトライン]
1)言語習得・言語使用の質的研究 とは
2)日本の英語教育に関する質的研究
3)質的研究者としての語学教員
【講演者略歴】
早稲田大学 (法学士)
Boston University Ed.M. (TESOL)
Temple University Japan Ed.D.
東京大学・早稲田大学で教鞭をとる。英語・質的研究・社会言語学等を教える傍ら、ナラティブを用いた社会言語学の研究を続けている。