TOP >> 2009 Monthly Meeting >> 2010/03/20の研究会Last updated on February 9, 2010
 
■■ 2009-2010 JACET Kanto Monthly Meeting ■■

演題:
「現代ヨーロッパ市民社会におけるplurilingualism理念
― 日本の言語教育への適応可能性を考える」

発表概要  本発表では、「英語」を相対化して考えるために、多くの課題を抱える現代ヨーロッパの市民社会における言語政策の役割を、欧州評議会の活動に焦点を当てつつ考察したい。さらに、ヨーロッパとは地理的・歴史的背景の異なる日本で、欧州評議会の活動成果をどのように応用できるかに関して、言語教育と地域社会との関わりや教育政策を念頭におきながら考えていきたい。
 現代のヨーロッパは「多様性の中の統一」を目指しており、その政治的役割は「欧州連合(EU)」が担っている。ヨーロッパにおいて市民の交流の活性化を目指す際の「壁」のひとつが「言語」の違いであろう。多言語社会ヨーロッパで「言語政策」が重要な所以はここにある。この「言語政策」を先導するのがEUとは別の組織である「欧州評議会」である。欧州評議会で提唱されたplurilingualismという概念は、日本では「複言語主義」という訳語で広く知られるようになった。日本での実践に移す前に、さらなる議論が必要だと考えている。その議論のひとつの材料を提供したい。
発表者略歴 山川 智子(関東学院大学非常勤講師)
早稲田大学第一文学部卒業。同大学院文学研究科修士課程修了。東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了。東京大学大学院総合文化研究科博士課程在学中に、ドイツ・フライブルク大学(ロータリー財団国際親善奨学生として)、ドイツ・ハレ大学(「日独共同大学院プログラム」参加)にて研究滞在。現在、東京大学大学院総合文化研究科博士課程在学中、関東学院大学、女子栄養大学非常勤講師。専門は言語社会学、教育政策、ヨーロッパ語系文学。

主な論文:
  • 「多言語共生社会における言語教育 ― 多様な言語への気づきをきっかけに」大津由紀雄(編著)『小学校での英語教育は必要ない!』慶応義塾大学出版会、161-181頁(2005年)
  • “Teaching languages other than English in upper secondary education in Japan” In JALT2005 Conference Proceedings. Tokyo: JALT.(2005年)
  • 「欧州評議会・言語政策部門の活動成果と今後の課題 ― plurilingualism概念のもつ可能性」東京大学ドイツ・ヨーロッパ研究センター『ヨーロッパ研究』第7号、95-114頁(2008年)
  • 「市民の『ヨーロピアン・アイデンティティ』確立を目指す欧州評議会の挑戦と社会に与えたインパクト」早大文学研究学会『ワセダ・レビュー』第42号、54-71頁(2009年)